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「Take It Easy」が座右の銘な管理人の感想雑記。
Posted by - 2024.04.27,Sat
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Posted by YoGAN - 2012.02.19,Sun
  

 http://kapselheidan.com/
 2月12日、昼の回を見てきました。

 原作者の藤田先生と小学館公認の上演とのことで、要となるセリフやストーリー展開はもちろん、ギミックや衣装の作りこみからも、作品への愛とリスペクトが感じられますね。 中でも最古の四人、特にパンタローネのクオリティ高すぎwww

 脚本のバランスも良かったです。鳴海、勝、エレオノール3人の出会いから、真夜中のサーカスとの決戦までの話(原作にして22巻分)を、2時間半によく納められたもんです。軸になる話以外の削ぎ落としが絶妙でした(合間のサーカス編は全カットなのでリーゼロッテやヴィルマいねえwwww)。

 原作と変えてきたところは、時間軸の推移でこれも妙手。3人の出会いに始まり物語が進むに連れ、回想を交えて過去にオーバーラップする原作に対し、クローグ村での惨劇と勝の父の事故死から、年表通りにスタートする舞台版。後者の進み方は、原作における過去への回帰を追体験できるのがいいですね。観客は、話が進むにつれて、「なるほどあのシーンはこういうことだったのね」と冒頭の幕間劇へ、回帰することができるからくりだ。過去編といえば欠かせないフランシーヌのエピソードは、サーカス編で明かしてくれるのでしょう。
 勝の父の事故のシーンは、最初からギイが関与していることを見せているので、原作既読組からするとニヤリ…ときてしまう場面(これもサーカス編での伏線回収が楽しみ)。ギイの「ママン…」のセリフも、その意味を初めから判っていると、全く違う趣があるものだなぁ。
 そして、過不足ない脚本にパワーマイムとアクションを交えた展開となれば、実に熱い。少年漫画らしい冒険活劇感が溢れて、鳴海の腕だけが残る前半のクライマックスなど、舞台らしい照明演出が文字通り光っていました。

 それゆえに惜しいと感じる点もいくつか。自分は既読組なので、原作寄りな感想になっている点はご容赦いただきたく…。

 「からくりサーカス」の舞台化において肝心なのポイントは、「原作の物語自体“それぞれの役者が演じていた”とカーテンコールで演出した点」にあると思うのです。
 何を言いたいかというと、
「人間になりたくて人間を殺す機械人形を演じる人間」
「機械人形を壊すために人間を捨てた人間を演じる人間」
 (実にめんどくさい表記ですが)こんな二重三重のパラドックスを抱えたキャラクターを、現実の舞台において役者が演じる、この構造のおもしろさに尽きるのではないか、ということなのです。

 ただでさえ舞台は、幻想空間と日常の狭間にある役者と観客による共有意識なわけで(テレビや映画のようにスクリーンで分断されていない)、これだけの設定が放り込まれれば、どんだけ美味しい話か。と思えてくるのですよ。
 この点に関する演出意図や解釈の在り方が、期待したほど見出せなかったのが、惜しまれます(あるいは盛大なネタバレになるから抑えていたのか…)。たとえばフウのような狂言回しを引き回せたら、ストーリーと現実の境目を見せられるんじゃないかな。このあたりは、サーカス編で唸ってしまうくらいに堪能させて欲しいですね。
 2/27追記:フウが前説などしたら、開演前からサーカスの雰囲気に引き込まれる感覚になるかな。

 この構造を活かした魅せ方もあり、もっとも分かりやすく体現していたのは、からくり人形“あるるかん”を役者が演じていたところでしょう。
 「機械人形を壊すために人間を捨てた人間が、機械人形と戦うために操るマリオネット」を、これまた人間が演じるという。キャスティング段階ですでにおもしろいところに、このあるるかんが舞台で自立行動をとってしまうのだからたまらない。
 それはしろがねが人形繰りを終えて、スーツケースに戻そうとするシーン。漫画ではスッポリ収納するだけのなんてことない場面。…が、現実では当然サイズが合うはずないので、それでもなんとか入ろうとオロオロする姿にクスクスとくる。
 最後は、開き直って歩いて舞台袖に下がるオチなのですが、スーツケースを抱えて一緒に下がる黒子に「ホント、スイマセンッス…」とリアクションしてしまうのだ。これは最高だった。

 カプセル兵団のお約束であるパロディネタでは、原作者つながりで「獣の槍」が登場。これはやるだろうと思っていたが、分かっていてもツボにくるw そして掟破りの集英社ネタを投入する、攻め気もさすが。相変わらずバカでいいのですが、役者に少しばかり照れが見えたのがもったいない。こういうのは、見る側がヒく間も感じさせず、全力で弾けて欲しいw

 パワーマイムによる演出も、その形にこだわりすぎたというか頼り気味に感じられた。久々のカプセル兵団だったためか、場面転換の多さも気になった。特に白銀がフランシーヌを送るくだり。あそこはそのまま自然に歩き出すだけでよかったのでは…。
 終盤のアクションにおいても、目まぐるしく場面転換するので、物語のスピード感は増していいけど、1シーンあたりのやりとりが薄味になる。リズムもやや単調で、変化やタメを入れたらもっとダイナミックな展開になっただろうか…と贅沢な希望を抱いてしまう。それだけ魅力のある演出なのですよね。

 演技についても、熱く高いテンションは「からくりサーカス」にマッチしますが、ちょっと張りすぎた感が否めない。抑えるべき・引くべきところ(役)が少ないせいか、ギャーギャー騒いでいる感じの芝居に見えてしまう。
 特に阿紫花あたりは、陰のキャラなので、もっと抑え気味にいけば陽の鳴海と対比されて、双方が際立ったんじゃないかな。ギイがそういう立ち位置でしたが、出番が少なかったので…うーむ。
 演技面が脚本やアクションの良さに助けられていたので、あるいはそれゆえに、前述のパワーマイムへの依存が感じられてしまったのかもしれない。

 どうも悪い点にばかり話がいってしまいましたが、舞台としての見応えは有り余るほどで、素晴らしい時間をすごせました(良い舞台だっただけに、影も色濃く見えてしまったところ)。
 見栄えした役者さんでは、コロンビーヌ役、周晴奈さん。声がなんとも色っぽく、艶を司る道化として大変よかった。耳元で囁かれたらさぞたまらないだろう…そんな近くだったら「白い手」で灰も残らず燃やされてしまいそうだが。
 そしてパンタローネ役谷口洋行さんの殺陣も鮮やかでしたね。最古の四人の幹部会的な場面、一人だけマイムをしているのですが、そのダンスにプロレスネタをしきりに投入するクセ者wwwwくっそwwww

 からくり編の影の主役たるルシールも堂々の存在感。一番の見せ場、ドットーレとの鬩ぎあいは、先が判っているのに、なんというカタルシスがあふれるか。
 あるるかん以外のマリオネットの組み方やジョージの神秘の球も、こうきたか!と思わず手を握る表現で、舞台ならではの醍醐味をみせてくれました。

 次のサーカス編には、原作既読の友人がいたら声を掛けて連れ立っていきたいですね。これだけネームバリューのある作品を手がけるにあたり、また数多くの公演をこなしてきた劇団ゆえに、「荒削り」「勢い」以上の「繊細さ」「緻密さ」にも、大きな期待をして11月を迎えたいところ。

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